農家の朝は早い。
5時にはみな仕事に出ている。
私は朝食の準備とお昼の
お弁当作り、それに洗濯をし、
息子を起こす。
息子の朝食に合わせて家族は一旦
帰宅し、家族全員で食卓を囲む。
息子を学校へ送り出し、私は
朝食の片づけを済ませると、
既に仕事に戻っていた
家族に私も合流して働く。
そして息子が下校する頃を
見計らって仕事を切り上げ、
夕飯の支度をするのだ。
これが農家の嫁としての、
私のルーティーン。
今どきの農家は
生き残り競争も激しくてね。
夫は必死で家業を盛り立てようと、
汗水たらして文字通り走り回って
働いていた。
農業に少しでも興味を
持ってもらおうとSNSを駆使して
情報発信をするのも夫が始めた。
義父母世代になるとネットを
疎ましく思う人も多くて、
でもそれじゃあ、この村の農業は
終わってしまうって、
夫は農協の人とも協力して農家の
魅力を発信し続けていた。
義両親たち自身は
義父
「俺たちはネットとか
よくわからんけど、この村と農業の
ことを知ってもらえるなら、
それでいいんでねーか?」
ぐらいのスタンスで、別に反対とか
していたわけじゃないけどね。
とにかく、私たち夫婦は村の中でも
農家の若い担い手として
大事にされていた。
夫婦揃って、前向きに農業に
向き合う、感心な若者だってね。
でも、実際の夫は
私と義両親に仕事を投げて、
浮気に走っていたんだよ。