娘の誕生日をすっぽかす夫

娘の誕生日をすっぽかし家を出ていく夫…【1話】

 

私はキヌ子。

38歳の専業主婦で、

2歳年上の夫のケイゾウ、

中学1年生の娘・シズクと

3人暮らし。

 

夫のケイゾウは、妻である

私から見ても子煩悩。

 

普段は仕事で忙しく、

娘と触れ合う機会は

決して多くない。

 

けれど、運動会や

授業参観といった娘の学校での

成果を発表する場の

ほとんどには、仕事を休んで

駆けつけていた。

 

絵や作文のコンクールで

表彰されたと聞けば、

お祝いに娘の好きな駅前の

洋菓子屋さんで娘が

喜びそうな季節もののケーキを

選んで買ってくる。

 

娘も難しい年頃に

なってきているにも関わらず、

夫を慕っているように見えた。

 

毎年、娘の誕生日は

かならず夕飯時には帰宅して、

プレゼントを渡すのが

恒例だった。

 

娘は推理小説や

探偵漫画が大好きだ。

 

なので、小さい頃は

「体は子供、頭脳は大人」

な名探偵のグッズを

よくねだっていた。

 

高学年からは興味があった

小説の大人買いを

ねだられることが

多くなっていた。

 

今年の娘の13歳の誕生日も

同じように家族全員で

祝うものだと私は思っていた。

 

「あなた、今週末は

シズクのお誕生日よ。

ちゃんと予定は空けてるよね」

 

「あっ、あぁ~」

 

ゴニョゴニョと言い淀む夫に

私は違和感を覚えた。