カケル
「お願い。
お母さん、帰って来て。
家に入れないよ。
いま、おばあちゃん達も
いないんだ」
何て間が悪い!
勝手もわからない義実家で、
いつ帰るかも
はっきりしない義両親を
待つのは、病気のカケルには
辛すぎるだろう。
キヌ子
「わかった!
お母さん、
急いで帰るからね !
もう少しだけ頑張って!」
私は上司に事情を話し、
すぐ会社を出た。
こういう時の、
ワークシステムだ。
今日はパソコンを
起動させて出勤した。
スマホからログインすれば、
途中の案件にも対応できる。
何とか仕事とカケルの事を
両立させられそうで、
ほっとした。
その直後…
安心が吹き飛んだ。
代わって、私の胸中を
満たしたのは、
夫と称するアホへの
怒りだった。
ほんとに、アホか!!
バスに乗っていながら
怒鳴るところだった。