ほとんど自暴自棄(じぼうじき)になって、
私は献立に取り組んだ。
考えつく限りの、
身を守る手段は講じておこうと決めて。
当日がきた。
私は自宅で料理を用意していた。
ややこしい話にならないよう、
父には事前に、厨房(ちゅうぼう)の
割り当てを聞いてはおいた。
会場は持ち回り、
今回はうちの店ではない。
別の、料理をお出しする「受け持ち家」が
経営するお店に、料理を持ち寄る。
最後の仕上げだけは、
そのお店の厨房をお借りするのだ。
うちの店が当番の時も、
同じことだった。
それなら。
だいたいの手順は読めたし、
私に厨房の割り当てが
無い事も分かった。
そもそも、私の参加を、
父は知らされていないようだ。
接待役だと信じて、
疑ってもいないらしい。
実父「いつも通りだが、
当番がうちじゃない事は忘れるなよ。
くれぐれも、失礼のないように」
私「はい」
受け持ち家は、親戚関係でもある。
血縁として遠い近いの差はあれ、
それぞれが長い歴史を持っていて、
時には家同士のつながりのため、
婚姻関係を結んできた。