夫
「なんだよ、
風邪でもひいたのか?
俺に移ったらどうするんだ。
近寄るなよ」
私
「違うわ」
夫
「じゃあ、なにか?
いよいよババァに
お迎えが来そうなのか?ふ~ん」
と、ニヤつきながら暴言を
吐く夫に早くも
私の堪忍袋の緒が切れた。
私
「お義母さんのことを
そんな風に言うのはやめて!」
夫
「なにマジになってんだよ」
私
「お義母さんじゃないわ!
でも、あと半年なのよ?
私たちに残された時間は!
あと半年しかないのよ!」
半ば叫ぶように言うと、
夫の表情はみるみるうちに
変わっていった。
最初は驚き、次に喜び、
そして打算的な顔に。
夫
「へぇ。あと半年か。
半年経てば、お前との腐れ縁も
切れるわけだ。
その辛気臭い顔も見なくて
済むわけだな。清々するわ~」
私
「そんな…。あなた、
よく平気でそんなことを」
夫
「なんだ~?最期の時は
夫婦らしく過ごしたい、てか?」
私
「そうね。
そう思ってもらっても…」
夫
「嫌なこった。
もういなくなるお前に
気を遣う必要なんてねぇんだ。
俺は俺のやりたいようにする」
ここまで来てようやく
私は気づいた。
夫の中で、
余命宣告をされたのは私
ということになっている。
しかし、ここまで馬鹿にされて、
訂正する気にはなれなかった。