その人はそれからも
ちょくちょく
来店するようになり、
お互い顔を覚えるような
関係になった。
ただその時はあくまでも
店員とお客さん。
プライベートの会話は
一切
交わすことはなかった。
これが後々
結婚することになる
トモヤだ。
そんなある日のこと、
またしてもトモヤが
来店した。
私はいつものように
彼のお気に入りである
奥の席に案内した。
トモヤはなにやら
仕事を抱えているようで、
席につくなり
ノートパソコンを開き
一心不乱に
にらめっこを始めた。
それまでの来店は
どちらかというと一息
つくための息抜きという
雰囲気だったので、いつも
朗らかな感じの
表情だったのだが、
この時は画面に向かって
真剣な眼差しを
向けていた。
前からトモヤのことを
気になっていた私は
その姿に
ドキッとしてしまった。
名前も知らないし
業務上の会話以外は
したことがないから、
何の仕事をしているかは
分からないけど、
やっぱりこの人はやり手の
エリートサラリーマン
なんだろうと再確認した
出来事だった。